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Silverbullet

Author:Silverbullet
ルエリ鯖主に7ch/モハフは3鯖
名前の由来は「銀の弾丸」で、通称ギンダマン。
勇者とは究極の器用貧乏である。

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モハポ劇場 遭遇編(やや下)
 またやっちまった。二重の意味で。
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「お話はギルドのほうからお聞きしています……。まずは皆さんが無事に戻られて本当に良かったです。ごめんなさいね、こちらの調査が甘かったせいで」
「いや、狩場では普段から乱入もありえますから」
 村長の謝罪に、ギンダマはそう言って応じた。
「それより、このままだと、そもそも渓流の安全確保は果たせていないわけですが……」
「いえ、そんなことはありません。まず、アオアシラの分はきちんと報酬をお支払いします。新手のモンスターについては、また別途、ご依頼をさせてくださいまし」
 ギンダマはマリソルから預かった白い毛を数本、手のひらに載せて、村長へ見せた。
「その新種ですが…… この毛を持って帰りました。何かご存知のことはありませんか」
「……ジンオウガ、ですわね」
 すぐに、村長は名前を口にした。
「渓流の奥、霊峰へ続く山地に住んでいて、ほとんど人里に姿を現すことはしないはずなのに…… 前回、その姿が確認されたのはもう百年以上前のことですのよ。
 その時、王国書誌隊はジンオウガを既存の種別に収まらないと結論し、牙竜種という新分類を立てて、記録しましたの。でも、生態の追加調査がはかどらず、ジンオウガの存在そのものが実は何かの見間違いではないか、とする説もあるぐらい」
 百年以上前となれば、ギンダマはもちろん生まれてもいないが、長命な竜人族の村長にとっては、懐かしい一昔前の出来事なのだろう、ゆっくりと、当時のことを思い出しながら話しているようだった。
「……ジンオウガを、村長はご覧になったことがあるのですか?」
「あります」
 村長は穏やかな表情を崩さないようにしたのだろう。ギンダマは村長の眉間にわずかな力が加わったことを見逃さなかった。
「ひとまず、今日はゆっくりとお休みくださいまし。
 ユクモの温泉は打ち身打撲に良く効きますのよ」
 ギンダマはもっと詳しく聞きたい気持ちだったが、おとなしく辞去することにした。村長の過去、それも竜人族の長い人生が、なんでも誇らしげにまたは朗らかに話せるものばかりではないだろう。必要なとき、村長は必要なことを教えてくれるはずだと彼は考えた。それが指導者に必要な素質であり、長らく村長を務める人物には十分に備わっているとギンダマは信じていたし、応急薬で回復しているとはいえ、きちんと体を休めておかなければ今後に響くことを、ハンターとしてのギンダマはよく承知していた。

「あっ、勇者様、お先でーす」
 集会浴場の暖簾をくぐったギンダマに、ましあが気がついて手を振る。既に温泉でさっぱりしてきた様子だ。隣のマリソルは竹筒から温泉ドリンクを一気飲みしているところだった。
「ふー、染み渡るなコレ! ……おや、勇者よ、来ていたか」
「うん。村長さん、アオアシラの報酬は満額くれるってさ。新種のヤツは、別途依頼を出すと言っていた」
「よかった、目的は村の危険の除去であってアオアシラではないとか言い出したら大回転するところでした」
「信用のおける村長さんのようだな。誠意イコールお金はこの世の真理よのう」
 しっかり者の二人であった。
「とりあえず勇者も浴びてくると良い。さっぱりするぞ。我らは一旦、部屋に戻るでな」

 湯浴み姿に着替え、暖簾をくぐったギンダマを温泉の湯気が出迎えた。手桶で頭から湯をかぶり、ざっと汗を流してから、ゆっくりと湯の中に足を入れた。湯気のむこうには何人かの先客がいるようだ。両腕を大きく上に伸ばしながら、ギンダマは先客の様子を伺った。
 程近い左手のほうには、大柄な男が腕を組んでじっと湯に浸かっている。赤茶色の短髪に彫りの深い顔立ちで、右頬から顎にかけて、細いサンマ傷があった。雰囲気から察するに、ハンターだろうか。
 正面奥には、やや細身ながら立派な筋肉の男がやはり湯に浸かっていた。ギンダマがここに来るまでに世話になった荷車を引く大きな鳥、ガーグァの頭部を模した被り物をつけており、顔立ちは見えない。鼻歌交じりにガーグァのおもちゃを三つ、湯の上に浮かべて並ばせ、遊んでいるようだった。
 ガーグァフェイクには若干の近寄り難さを感じ、サンマ傷の男のほうに向かうと、会釈をして、肩まで湯に浸かった。ギンダマがあと三人は入る隙間を空けていたが、しばらくして、サンマ傷の男はギンダマのほうに視線を向けてきた。
「……お前、ハンターか」
「ええ。一度は足を洗いましたが」
 首肯して答える。しかし、ギンダマの声は緊張しており、警戒感を抱いていることが明らかだったが、サンマ傷の男は気がつかなかったのか、妙に打ち解けた笑顔を向けてきた。
「ははは、似たもの同士か。名前は?」
「……ユーシャス」
 ギンダマはとっさに偽名を名乗った。
「そうか、俺はライナス。今は比較的安全で実入りが良くて世の中の役に立つ仕事をしている。
 以前はドンドルマで老山龍を撃退したこともあるが、まあ、昔の話だ」
「ド、ドンドルマで老山龍を撃退したライナスって……」
 ギンダマは驚いて、つい声に出てしまった。
「昔の話だ。失礼する。……明日、早いんでね」
 サンマ傷の男はギンダマの言葉をさえぎると、立ち上がり、湯を掻き分けて立ち去った。その姿を見送り、ややあってから、ギンダマは続きを口にした。
「……お前じゃないだろ」
 続きの言葉は小さく、誰の耳にも届かなかっただろうと思われた。口をへの字に曲げ、しばらくギンダマは黙っていたが、やがて、謎の直感で偽名を名乗ったことを自画自賛する方向に考えを切り替えた。もしサンマ傷の男が事情を詳しく知った上でライナスを騙っているのなら、ギンダマの名も知っているだろう。
 ギンダマが正直に名乗っていたら、おそらくサンマ傷の男は何も言わなかったに違いない。
 ハンター界隈では、同じクエストに出る場合でもお互いに名乗ることはあまりない。野良でクエストに参加した場合、概ね一緒に行動し、メインターゲットをクリアすれば解散する。そこに名前を知っている必要性はなく、腕前のいい相手など、これはと思った者には名前を聞いたり、ハンターの名刺的位置付けのギルドカード交換を申し出たりすることはある程度だ。
 実力が先、名前が後、なのだ。
 そのハンターに、まず最初に名前を聞かれることの違和感が、ギンダマに偽名を名乗らせたのかも知れなかった。

狩猟 | 11:41:33 | Trackback(0) | Comments(1)

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