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Silverbullet

Author:Silverbullet
ルエリ鯖主に7ch/モハフは3鯖
名前の由来は「銀の弾丸」で、通称ギンダマン。
勇者とは究極の器用貧乏である。

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モハポ劇場 温泉編(中)
「有名というか、あれだよ、同郷の者だからな。知ってるさ。
 カリスマデザイナーになるんだってユクモ村を飛び出して、港町に出て修行してるんだけど、商売もやりたいからって、自分の店で着物を売ってるんだ。素材とかはユクモ村から仕入れて、堅実にやってるよな」
「誤解を招く表現があったと思うが」
 堅実、という表現にひっかかり、ギンダマが少し疑義を挟むが、若者は気にしないようだった。
「パチもの売るよりましさ。少なくとも、ここで胴着を作った経験は充分あるんだし。
 でも、そうかあ、あいつもまだ自分のデザインの着物を売るほど、順調じゃないってことだよな。
 将来設計って難しいわホント。ははは」
 若者は乾いた笑いと共に再び歩き出した。鍛冶屋と雑貨屋の間にある石段を登ると、広場とそれに面した数軒の住宅、岩を環状に並べてつくった小さな露天の温泉、湧き水が小さな滝になって注ぐ池が見えてきた。
 その池の前には、赤い布を敷いた長椅子がおいてあり、藤色の着物を着た竜人族の女性が腰掛けて、書物に目を落としていた。
「ここが村の広場だ。あの池のほとりに座っているのが村長さん。
 とりあえず村長さんにご挨拶しておいて損はないぜ。ギンダマさんの湯治が長くなるなら、なおさら」
「ありがとう、そうするよ」
「じゃ、オイラは鳥居に戻るぜ。あとは村長さんが教えてくれるだろうしな。
 気が向いたら鳥居に来てくれよな。大抵そこで門番をしているから。何しろオイラはユクモの鬼門番と恐れられる男だからな。あまり留守にもできねえ」
 そういい残すと、道案内を買って出た時と同じ有無を言わさぬ雰囲気で、若者は立ち去った。
 鬼門番とは大きく出たが、秘境の温泉地ともなると、ガラの悪い客やいかがわしい商売の拠点にしようと考える裏社会の者も現れるのかもしれない。村人と湯治客の安全と、その結果として生じるユクモ村の評判というものが、門番という仕事にかかっているのかも知れなかった。
 ギンダマが竜人族の女性に近づくと、彼女は膝の上の書物から視線を上げ、ギンダマのほうを見た。細長くとがった耳、ほとんど開いているかどうかわからないほど細く切れ長の目、淡い化粧をつややかな肌に乗せた美人であった。
 書物を閉じ、ギンダマに微笑を向けた。
「あら珍しい。ハンターさん?」
「はじめまして、ギンダマと申します。ユクモの湯が大変よろしいとお聞きしまして……。
 まあ、ハンターをしていたこともあります」
「そうでしたの、ごめんなさいね、私ったら、早とちりして。ギンダマさん、ゆっくりお湯に浸かって、疲れを癒してくださいまし。
 ここしばらく、村に常駐のハンターさんがいなくて、山道も物騒な話を聞きますの。ギルドに派遣をお願いしたのだけど、なしのつぶて。やっぱり、都会がいいのかしら。
 あ、愚痴になっちゃったわね」
 口元を隠し、ほほほと笑う村長。だが、背中に太刀を背負ったギンダマを見てただの温泉客と思うものはいない。どう見てもハンターではあった。
「今、湯治のお客さん向けのお部屋がちょっとイッパイなので、昔、村のハンターさんが使っていたところをお使いくださいまし。広場から見える、そこのおうちですのよ」
 村長の指差す先には、一軒の家があった。こぢんまりとしているが、ギンダマ一人が逗留するのに充分な広さがありそうだった。話から察するに、しばらく空き家だったと思われるが、それにしては屋根の瓦もしっかりしており、壁にも綻びは見えなかった。

 礼を述べて辞去したギンダマが提供された家に入り、荷物を置いて、ベッドに腰掛けると、遠くからかすかに滝の音が聞こえてきた。玄関と向き合う位置にある裏口は、板葺きの廊下に繋がっており、その廊下から見下ろす谷間に流れる渓流から、その音が聞こえてきているようだった。
 玄関も裏口も、厚手の布で織られた暖簾で仕切られており、施錠できるドアで仕切られたドンドルマのような都市とは違う生活を目の当たりにすると、村が村であり続けるのと対照的に、都市が周囲に広がり発展して行くのか、その違いに驚く。
 暖簾それ自体も精緻な幾何学模様で彩られ、豊かな自然の恵みを享受し、それを生活の中に昇華する技術の深さがあることを考えると、その違いは技術によっては決まらず、おそらく人々の考え方や文化によるものであろうと思われた。
 そして、人々の考え方の中心にあるのは、その拠点を治める指導者の考えなのだろう。人々は考えを同じくしない者と同じところに生きることができない。それは人類同士の戦いがなくならないことが証明している。
 ユクモ村が秘境の温泉地であることは、すなわち、あの村長がそのように望んだ結果なのだろう。少なくとも、門番の若者が言うような『山に入ったほうが話が早いから農場の開拓が進んでいない』のではない。ユクモ村周辺で採集できる食料や資源で維持できる範囲以上にユクモ村が発展することを望んでいないのだ。
 もし発展を望めば、おそらくユクモ村は秘境ではなくなる。それはユクモ村がユクモ村ではなくなることを意味するのだ。
「さて……」
 ギンダマは立ち上がると、裏口の暖簾をくぐり、廊下を右手に進んだ。やがて見えてきた階段を登ると、そこは浴場だった。暖かく湿った空気に芳しい木の香りに満ちた浴場には、見覚えのある掲示板があった。ギルドのクエストボードだ。
 見れば、クエスト受付カウンターに受付嬢も座っており、その横では一段高い座に竜人族の老人が座っており、大きな瓢箪からお猪口に中身を出して、ちびちびやっていた。
「おっ、チミ、ちょっと来なさい」
 老人がギンダマの姿を見て、手招きした。ギンダマは迷ったが、ここで逃げ出しては、いろいろとややこしい話になりかねない。
「何か……」
「チミはハンターの経験があるようじゃの。名前は?」
「……ギンダマです」
「そうかそうか、ま、ゆっくりして行きなさい。温泉のあとにはユクモの霊水をキュッとやると、これまた格別なんじゃ。どうじゃ、チミもやるかね?」
 老人は上機嫌だが、明らかに霊水とは、お酒であった。
「おっとと、まずは湯からじゃな。はっはっは。邪魔したのう」
「どうも……」
 老人が再び手酌で始めたので、ギンダマはその場を離れた。受付嬢に目をやると、にっこり笑って会釈をしてくれたので、返礼して、その場を離れた。
 そう、まずは、湯だ。

狩猟 | 12:00:01 | Trackback(0) | Comments(0)
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