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Silverbullet

Author:Silverbullet
ルエリ鯖主に7ch/モハフは3鯖
名前の由来は「銀の弾丸」で、通称ギンダマン。
勇者とは究極の器用貧乏である。

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モハポ劇場 プロローグ その1
『やあ、俺だ。君のことだから、今も元気にしているのだろう。心配はしていない。
 俺のほうは、命懸けの一攫千金生活をやめ、比較的安全で実入りが良くて世の中の役に立つ仕事をしている。
 逆バサで稼いだ貯金はあるが、ブラブラしているのもカッコがつかないのでな。

 ドンドルマは、変わったところもあるし、変わらないところもある。まあ、それは詳しく語るのはやめておく。
 一番変わったのは、君がいなくなったことだからだが、でも、仕方がないさ。
 そうそう、れなはが「利権もないのに組織は維持しないぞ」と少し怒っていた。謝っておいたほうがいいぞ。

 同封した地図は、どうせ旅立つなら足を延ばして、湯治でもしたらどうかと思って、隣の大陸の有名な温泉郷の場所を示しているものだ。かなりの秘境だから、気が向いたらハンターの仕事でも引き受ければ、生活には困らないだろう。
 まあ、パーティは組めないだろうけどな。今の君にはそのほうがいいかもしれない。
 それじゃあ、また、元気で』

 もう何度も読み返した手紙を、また読み返している。ただ、この地方で一般的なガーグァという大型の鳥が引く荷車の上は、あまり文字を読むことに適した環境とは言い難く、目をしばたかせてこみあげてくる不快感を振り払い、手紙をたたんで懐にしまい込んだ。
「旦那さん、乗り物の上で読み物をしちゃダメにゃ。これ古来から『乗って読んだら酔う、お酒を飲んだら酔うのと同じ』と言われているとおりニャ」
 荷車を運転するアイルーにたしなめられ、ゆったりとした衣装に藁を編んで作ったつば広帽をかぶった男は肩をすくめた。
「旦那さん、見たところ、ユクモ村に里帰りかニャ? ユクモ村はいいところニャ~」
「いや、湯治に行くんだ。この服は、港町で買ったんだ」
 ドンドルマを出て、長らく徒歩の旅をして、船に乗って隣の大陸までやってきた彼が、こちらの大陸の港町でユクモ村に行くにはどうしたらよいか、ということを手近な店番に尋ねたところ、湯治客はこの服を着ていないと相手にされない、ということを聞かされ、素直に一式、サイズを合わせてもらうことにしたのだ。
 だが、結果的に、その服装で街を歩くと完全に「最近ユクモ村に行ってきた人」扱いされ、最近のユクモ村事情、特産キノコの今年の取れ高、門番の男の尻のダメージは回復したか等等、知りもしないことを根掘り葉掘り聞かれ、非常に難儀したのであった。さすがに腹に据えかねて文句を言いに行ったら先客がいて、例の店番は「ユクモ村は秘境なので、この服を土産に買わないと『湯治に行ってきました』『またまた御冗談を』という感じで相手にされないの意」と話しているのを聞いてしまい、ますます厭世気分が高まった彼はユクモ村に向かう荷車に便乗させてもらえるという話を求め、踵を返したのであった。
「あいつまだあの商売しているのか~。旦那さんもお人よしニャ」
「有名なのかよ」
「有名だけど、ボッタクリでもないし、素材はユクモ村から仕入れている本物ニャ。仕立て屋の腕もアイルー界隈でも評判いいニャ。ユクモ村でお土産を買い損ねた客にはありがたい店だし、他人の商売に口を出す時間があるなら自分の商売をするのが金持ちアイルーおじさんの教えニャ」
「……なるほどね」
 癒し系の外見に見合わず、現実的というか、お金に執着するような発言をするアイルーに少し面食らった様子の男であったが、考えてみれば、彼がドンドルマで世話になっていた給仕ネコも、その仕事に見合った給金をギルドからもらっていたわけであって、様々な価値観を橋渡しするお金という概念に善悪やキレイ汚いの評価を加えること自体、おかしなことであった。
 今の彼には浮世の憂さを忘れ、湯治か何かでゆっくりする必要性があることは確かなことのように思われた。
「まもなく峠を越えるニャ。ユクモ村はまもなくニャ」
 峠、といってもさほど険しい道ではなく、周辺の木々も針葉樹が多いものの、広葉樹も少なくなく、秋には見事な紅葉が山を彩るのだろうと思わせる場所だった。今まで進んできた道は斜面を斜めに何度も往復する山道で、舗装はされていなかったが、それなりの数の荷馬車が通過する道のように見えた。
 そうでなければ、もっと下草が生えていても不思議ではない、それほど、周囲の山は草木に満ち溢れていた。谷の向こうに見える山肌にはやはり木々がひしめき、うっすらともやがかかっている様子が見える。そして、その空には徐々に暗い色の雲が広がりつつあることも。
「ひと雨、来そうだね」
「あちゃー、思ったより早く降りそうニャ。少し急ぐニャ」
 荷物はきちんと木箱に収められ、藁をかぶせてあるが、ぬかるんだ山道を進むのは危険を伴う。ずるりと滑れば一巻の終わり、ということもあり得る。荷車の加速に備え、男はわずかな自分の荷物を腹に抱え、荷台のへりを捕まえる手に力を込めた。
 加速した荷車が峠を越え、折り返しを二回ほど過ぎたあたりで、男は青白い光を見た。状況的に、稲光かとも思ったのだが、光は空ではなく、木々の中から見えたように思えた。腹に抱えた荷物を放し、厳重に布で巻かれた棒状のものを取り出す。素早く布をほどくと、立派な太刀が出てきた。
 光の見えたあたりを駆け抜ける荷車の上で、全身に緊張をみなぎらせた男が太刀を手に立つ。その心配をよそに、何事もなく荷車が通過するが、次の折り返しを過ぎ、再び光の見えた場所を通過する、その時、巨大な影が背の高い草むらから飛び出した。
 とっさに太刀を抜き、眼前に迫る鈍い金色の爪を弾いたが、その勢いはあまりにも強く、男は荷車から放り出され、草むらに落下した。
「だ、旦那さん!」
「そのまま進め!」
 心配そうなアイルーの叫びに、男は返事をし、草むらを転がり落ちるようにして駆ける。今度は横から、巨大な影が襲い掛かってくるのを前転して回避し、さらに足を速めた。二、三回、自分の速度に足がついていかず、前転をはさんで、斜面を駆ける男の視界を青白いあの光が尾を引くようにして過ぎ去る。それを目で追わないように必死にこらえ、男は草むらから跳躍した。そこに折り返してきたアイルーの荷車が来て、男はどすんと荷台に落下する。
 すぐに背後に向き直って太刀を突きつけるが、後を追ってくるものはなかった。いつの間にか降り始めた雨は大粒で、つば広帽子の前に小さな滝ができており、遠くから雷の音が低く轟きわたって来ていた。
 雨の中、荷車が駆ける振動に、今度こそ振り落とされないようにと、腰を低くし、ふたたびへりを捕まえるが、抜身の太刀を握る手と、背後を睨む目から力を抜くことはできなかった。

狩猟 | 12:34:19 | Trackback(0) | Comments(0)
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